北の作品と障害者
北杜夫は一九二七年生まれ、歌人の斉藤茂吉の次男、斉藤家は青山脳病院を営み、子供の頃から精神病者と遊んでいたという。一九五二年東北大学医学部卒、慶応大学病院神経科、山梨県立精神病院、斉藤神経科医院で臨床医として働き、一九六〇年「夜と霧の隅で」で芥川賞を受賞している。北は精神病者、知的障害者が登場する作品を数多く書いている。
◇一九六〇年「夜と霧の隅で」
ホロコーストとして知られるユダヤ人や障害者を虐殺する計画が、一九四三年南ドイツの精神病院で実行されることになった。不治患者を収容所に移せとのナチスの命令に対し、不治ではないことを示すために「一か八かの博打」と批判される危険な治療を行う医師。ナチスに「生きるに価しない生命」とされた障害者を守ろうと苦悩する。
◇一九六四年「楡家の人々」
耳の穴から脳を見て診察し、言葉で患者を煙に巻いて治ったと思わせる独特の治療を行う楡脳病院長。病院の少し足りない看護人やせむしの飯炊き人、奇妙な節回しで新聞を読む患者。
◇一九六六年「もぐら」
精神病院で作業療法としてモグラ退治を行っている。院長はそれを題材に映画を作るという具体的な目標を患者に与え、映像によって自分を外から眺めることで治療効果を意図する。脅迫神経症患者、てんかんのある精神薄弱者、幻聴・幻視のある者、暗殺団に狙われている分裂病患者、碁は強いがぼけている脳梅毒進行麻痺の爺さん。互いに協力、対立しながら監督・カメラマン・役者となる。
◇一九六九年「さびしい王様」
革命により城から放り出されるが、森で蟻を尾行する自由を幸福と感じる「にぶい脳」の王様。


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